ハードボイルドでクールな精神世界に連れてって

尊敬する詩人、小林大吾氏の「象を一撃で倒す文章の書き方」によれば、"最高の書き出しというのはとどのつまりそれでぜんぶ終わっちゃうような一文のこと"らしい。もの書きサンにとっては初歩的な技巧のひとつ。にしても独特でメガトン級な命題をつける彼の精神はじつに上品で、洒落ていてときめいてしまう。

 ハードボイルド小説で活躍する主人公たちは、デンジャラスな事件に巻き込まれるのがお定まり。だが読者の楽しみはそのあと、ここぞの局面で決まって「やれやれ…」と天を仰ぎ、続けてウィットに富んだ、洒落た一言ボソリとつぶやくのだ。完璧にキメてくれるし実にふざけている。緊張と緩和である。

 小説のフィクションはとても面白い。しかし実はそれを演出できるのは彼らの存在があってこそで、5感で感じとる世界のアウトプットが浮世離れしているからだ。彼らのなんと創造的なこと!

 ーこれを総じてユーモアというのであれば、ユーモアの欠陥した僕の世界にならぶちゃぶ台が一斉にひっくり返る。つまりはセンスのない世界の解釈をしていたということに気づく。ユーモアは足元にあり、目をこらせばみえる楽しい世界。そう「地球」が「宇宙船」であるように。